ここでは日本で利用されている麹菌(Aspergillus属)について記載していく。
麹菌分類(食品用)
食用に使われる麹菌は色によって分類されることが多い。
- 黄麹:黒麹や白麹以外というのがわかりやすいだろう
- 白麹:黒麹や黄麹の白色変異体
- 黒麹:主に焼酎で利用されるクエン酸生成株
ちなみに鰹節も麹菌の仲間Aspergillus glaucusによって作られる。
黄麹
- Aspergillus oryzae
醤油から味噌、清酒、みりん等で活躍。
- Aspergillus sojae
主に醤油で活躍(味噌にもいる)。高いプロテアーゼ活性、低いα-アミラーゼ活性が特徴
- Aspergillus tamarii
たまり醤油や豆味噌で少しだけ活躍
白麹
- Aspergillus luchuensis mut. kawachii
焼酎で活躍。白麹といったらメインはこっち。
- A. oryzaeやA. sojaeの白色変異体
スーパーとかで見かける板状の米麹が代表的。
黒麹
- Aspergillus luchuensis
泡盛、焼酎等で活躍。
- (Aspergillus awamori)
Aspergillus luchuensisの前世(経緯は調べてね)
鰹節用麹菌
- Aspergillus glaucus
有名な他のAspergillus属(非食品)
- Aspergillus flavus
- Aspergillus parasiticus
上記2種はアフラトキシンを生産することで有名。
- Aspergillus terreus
ヒトの血中コレステロール低下させる薬であるロバスタチンを作る子
- Aspergillus fumigatus
アスペルギルス症の最たる原因菌
- Aspergillus niger
クエン酸を作る子。強い酸性条件下でも、乾湿両方でも生育可能なため、クエン酸の工業生産に一役買っている。
実はそうなの!?麹菌
- ちなみに美容系でコウジ酸が話題に上がったりするが、酒造りの人の手が美白なのはコウジ酸ではないようだ。意外と麹菌利用食品の製造工程でコウジ酸を生産するのは困難っぽい。
- 清酒作りで大敵となる日落ち菌の餌となるメバロン酸を生産しない株もいるらしい。
- 清酒での以上着色防止のためその原因となるデフェリフェリクリシン非生産株もあるらしい。
- アフラトキシン(B1は天然物でもっとも強力な発ガン物質)はAspergillus flavusの毒という意味。
Aspergillus flavus toxin→A. flavus toxin→aflatoxin
ひとこと(ひとこと?)
調べていくとAspergillus属の菌たちのほとんどは多核かつ有性世代がないゆえに変異が少ないということに至った。
そこからわかることは食品に使われているAspergillus属達は変異しないゆえに安心して使用できるという反面、付加価値創造等の発展させることが難しいということである。
一方で思うことは、変異が少ないのに食用で使われるAspergillus属が日本で多いのは、日本でAspergillus属が古くから親しまれていたからなのだろうか、ということだ。まったく国菌とはよく言ったものだ。まあ国菌はAspergillus oryzaeなのだが。。。
最後に「麹」より「糀」のほうがなんか可愛いよね。
文献
マルコメ株式会社,”麹のこと”,
https://www.marukome.co.jp/koji/(参照日2024/11/30)
キッコーマン株式会社,”麹菌ゲノム解読”,
https://www.kikkoman.com/jp/quality/research/about/soysauce/genome.html(参照日2024/11/30)
北本勝ひこ,発酵醸造学,株式会社朝倉書店,2022