「とりあえず生!」
そんな言葉も減少傾向かもしれないが、未だに外飲みの一発目に選択する人も多いだろう。
大人数の場合、客としても店員としても提供の足並みを揃えやすいので、なくなるべきであるとは言わないものの、多様性や個人主義が叫ばれる昨今である。まあ、衰退はするのは当然かもしれない。
かくいう私も許される飲みの場であるならば、他の物を注文してしまう。
このページではビール、そしてついでに発泡酒について記載していこうと思う。
大まかな分類
酒税法的分類
- ビール
- 発泡酒
新ジャンルや第三のビールと呼ばれていたものは発泡酒に統合されたため不記載とする。
詳しくは国税庁を確認してほしい。国税庁>お酒に関する情報>発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き(PDF/1,382KB)にどう移行するのか?について記載があるので、詳しく知りたい人はここへどうぞ。
ざっくりいうと、
麦芽とホップと水がメインで許された副原料が少し入っている=ビール。
それ以外=発泡酒
の認識でいいだろう。
発酵法(酵母)による分類
- ラガー(下面発酵)
- エール(上面発酵)
- 自然発酵
ラガーは低温かつ長期間の発酵、熟成を行う。下面発酵は酵母が下に沈んでいるということ。
エールは”ラガーと比較して”高温かつ短期間の発酵熟成を行う。上面発酵は酵母が浮いているということ。
自然発酵は野生に存在する酵母を利用して行うもの。
下位分類
多種多様で、ここに記載するとそれだけになってしまうので記載しない。よって各々調べていただきたいが、参考になりそうなサイトを紹介しておこう。
クラフトビア・アソシエーション(日本地ビール協会)から
ビアスタイル・ガイドライン2404
このページでは、なんと100種類を超える分類を紹介している。
ここに行くと各々の違いを探す楽しい楽しい時間の始まりである。
製造方法(簡易的)
- 麦芽を糖化させ、醪(もろみ)をつくる。
- 醪を濾過し、麦汁を得る。
- 完成した麦汁を煮沸させながらホップを加える。
- 発酵、熟成
- (濾過、火入れ)
製造方法(詳細)
原料選定
- 麦芽
粒の大きさがそろっていて、たんぱく質は少なく、でんぷん質は多く、きちんと発芽していて、水分の少ないもの。
- ホップ
求める味によってどのようなホップを使い、どのようなビターとアロマの比率にするかなど決定をする。
- 水
一般的に日本であれば水道水基準のものでいいだろう。しかし、求める酒質によって何らかの塩類(ミネラル)を加えて調節する必要がある。
- 酵母
作りたい酒質、仕込み方によって適切に使い分けをする必要がある。
下面発酵と上面発酵では菌が違う。
- (副原料)
使っても使わなくてもよい。”酒税法的分類のビール”におさめるのであれば、政令に基づく許可されたものを許可された分だけ使用すること。
醪(もろみ)の生産
仕入れた麦芽を粉砕し、水と合わせて加温し、麦芽内の酵素を働かせて醪を得る。
主に
- インフュージョン法
仕込みの全体量をタンク内で徐々に加温していく。
- デコクション法
仕込みの一部を取り出して煮沸し、元に戻すを繰り返し、全体を加温していく。
に別れる。
どちらを選択するか。そしてそれぞれの方法の中でも何℃で何時間、何回に分けて目的温度まで加温していくか。など様々な条件があり、作り手のこだわりが見えるところであると思われる。
麦汁の生産
前段階で作った醪(もろみ)を濾過して麦汁を得る。
- 醪を濾過用のタンクに移し、麦芽による自然な濾過層を作る。
- 詰まりが発生しないように引き抜いていく。(一番搾り麦汁、一番麦汁)
- お湯を上部より散布し、残っているエキス分やポリフェノールなどを追加で引き抜く。(二番搾り麦汁、二番麦汁)
麦汁煮沸
文字通り麦汁を煮沸する。ついでにホップもここで加える。
ここでは加熱による
- ホップの有効成分抽出
- 加熱による麦汁成分の変化
- 酵素の失活
- 殺菌
- オフフレーバー(不快な臭気)の蒸散
などを目的に行う。
ホップは200種類を超えるうえ、ペレットにしたり、エキスにしたり、もう多種多様を超えて多種多様である。さあ、あなたがビールを作るとしたら、どのホップを使いどのような状態でどのくらい使う?
発酵、熟成
前段階で得た煮沸済みの麦汁を濾過したうえで冷却されこの段階に来る。
この段階では冷却された麦汁に酵母を加え、若ビールを作る。
そしてその若ビールを熟成させることでビールがほぼ完成させる。
前述した発酵法による分類では
- ラガー(下面発酵)
- エール(上面発酵)
- 自然発酵
で分類されるとした。
ラガーは低温かつ長期間の発酵、熟成を行う。下面発酵は酵母が下に沈んでいるということ。
エールは”ラガーと比較して”高温かつ短期間の発酵熟成を行う。上面発酵は酵母が浮いているということ。
自然発酵は野生に存在する酵母を利用して行うもの。
どのような酵母を使用するか、前段階までにどのような処理をしたかによって香りや味が大きく変わってしまう。
参考としてフランスの酵母販売会社であるFermentisの商品ページ(https://fermentis.com/en/fermentation-solutions/beer/)を確認してほしい。
※2024/12/24現在、英語またはフランス語しかホームページがないので頑張って読んでほしい。ちなみにアプリもあるので気になる方はダウンロードしてはいかが?
Fermentisではラガー酵母やエール酵母の単体だけでなく、野生酵母や細菌をまとめてパッケージしたものや、低アルコール用酵母も販売している。
濾過、火入れ、炭酸ガス注入
これらは瓶や缶、居酒屋やイベント等で見る樽に移す工程の一部である。
しかし、これらをしない商品も数多くある。
未濾過の商品は濾過による味の変化を嫌った商品である。酵母が残存するため期限が短い。
火入れをしないものは生ビールと呼ばれる。
炭酸は酵母由来の炭酸では足りない場合や品質の均一化のために行われる。
菌
- 酵母
Saccharomyces属
- 野生酵母
Brettanomyces属
- その他細菌
Lactiplantibacillus属,Levilactobacillus属,Pediococcus属
ひとこと(ひとこと?)
このページの冒頭で書いた通り、私はビールよりかは他の酒を飲みたいタイプだ。
そんな私でも飲み比べてみたいと思うほどにこのビールというものは種類が多かった。この酒が好きになってしまったら沼にはまって抜け出せなくなるだろう。深淵を覗いてみたら深淵が引きずりこもうと手を伸ばしてきている。
ところで現在、集団の場合においてとりあえずビールを注文する人の割合はどのくらいなのだろうか。
そして個人とどのくらい差があるのだろうか。
文献
- 小泉武夫,発酵食品学,株式会社講談社,2012
- 北本勝ひこ,発酵醸造学,株式会社朝倉書店,2022
- 北本勝ひこ,醸造の事典,株式会社朝倉書店,2021
- 宇野浩一,お酒の香り,有限会社フレグランスジャーナル社,2015
- 小泉武夫,角田潔和,鈴木昌治,酒学入門,株式会社講談社,1998
- 青井博幸,ビールの教科書,株式会社講談社,2019
- 大河内基夫,マイスターのビール醸造学ノート,Independently published,2022
- 滝口直樹,日本ビール検定公式テキスト2022年5月改訂版,株式会社マイナビ出版,2022
- 国税庁,”発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き”,
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/pdf/0023008-027.pdf(参照日2024/12/24) - クラフトビア・アソシエーション(日本地ビール協会),”ビアスタイルガイドライン2404目次”,
https://beertaster.org/beerstyle/beerstyle2404_j.html(参照日2024/12/24) - Fermentis by Lesaffre,”Beer & Brewing Yeast”,
https://fermentis.com/en/fermentation-solutions/beer/(参照日2024/12/24)