エタノール生産をする菌といえばといえば、酵母の一種であるSaccharomyces cerevisiaeが浮かぶだろう。
無論、酵母の代表格であるこの子がエタノール発酵でもよく出てくるのは間違いない。
しかし、この子以外にもエタノール発酵をしている子達がいるんだぞってことで紹介をしていく。
Saccharomyces cerevisiae
今回の端役。
いつもは酵母の中でも主役のような振る舞いをしている。
今回は君じゃない。
Saccharomyces pastorianus
前述したcerevisiaeと同じSaccharomyces属の子。
この菌は主にラガービールにて活躍している酵母である。
下面発酵がSaccharomyces pastorianusで、上面発酵がSaccharomyces cerevisiaeである。
正直、どっちがどっちか分からなくなる。
(Saccharomyces sake)
現在はSaccharomyces cerevisiaeに分類されている子。(2025/03/24現在)
sakeと書いてあり、予想しやすい通り日本で分離された。
主に清酒(日本酒)で活躍している。
酵母の分類学上ちょっと面倒なので()をつけておいた。
気になる人は
“The yeasts, a taxonomic study 第5版の Key to species による国酒酵母の分類学的特徴付け”
と調べてみてほしい。
Schizosaccharomyces pombe
酵母は酵母でもSchizosaccharomycesに属する子。
ミレットビールの一種であるポンべから分離された。
個人的にはラムの製造で活躍しているイメージ。
Zygosaccharomyces rouxii
この子も酵母である。
醤油や味噌中でのアルコール発酵をおこなう耐塩性の酵母。
Kluyveromyces属
名前からはわかりにくいが、酵母の一種である。
乳糖をエタノールに発酵している。
乳酒で活躍している。
(乳酸菌)
乳酸菌の発酵には原料の糖をほぼ乳酸に変換するホモ乳酸発酵と、乳酸と同時に酢酸やエタノールなどを生産するヘテロ乳酸発酵がある。
Lactobacillus属の一部とLeuconostoc属、Bifidobacterium属が食品中にいるヘテロ乳酸発酵を行う乳酸菌として有名であるが、この子達が生産するエタノールをメインとした食品はわからなかった。
Zymomonas mobilis
この子は酵母でもなく、乳酸菌でもない細菌の一種である。
Zymomonas mobilisはアルコール飲料であるプルケ、メスカル、テキーラの製造に関与している。
この子は高いエタノール生産性を持っているためバイオエタノール生産・研究にも使われる。
ひとこと(ひとこと?)
Saccharomyces cerevisiaeはビールやワイン、パン等を作っており、酵母と炒ったらこの子という印象を持っていたので、初めてこの子ではない酵母で作る酒を知ったときは驚いた。
そしてさらに驚いたのが、Zymomonas mobilisだ。
アルコール生産を主にする菌といえば酵母という認識があったので、細菌の一種が主に活躍して酒を造っていると知って驚いた。
私たちが口にしているアルコール製品はこの子たちによって作られているので、この子たちに感謝しなくては。ありがたやー。
文献
- 薄井隆, 根元茂, ラム醸造微生物学の進歩,
日本釀造協會雜誌 1986 年 81 巻 6 号 p. 379-384 - 森谷千星, 小泉麻衣子, 中山俊一, 鈴木健一朗, 門倉利守, The yeasts, a taxonomic study 第5版の Key to species による国酒酵母の分類学的特徴付け,
日本微生物資源学会誌 2020 年 36 巻 2 号 p. 25-37 - グローバルライフサイエンステクノロジーズジャパン株式会社, “バイオダイレクトメール vol.55 細胞夜話<第18回:pombeはどんな味? – Schizosaccharomyces pombe>”,
https://www.cytivalifesciences.co.jp/newsletter/biodirect_mail/cell_story/55.html?answer=2(参照日2025/03/24) - 竹田正久, 清酒酵母の特性と生態, 一般社団法人東京農業大学出版会, 1996
- 小泉武夫, 角田潔和, 鈴木昌治, 酒学入門, 株式会社講談社, 1998
- 竹田正久, 清酒酵母の特性は日本酒の文化, 一般社団法人東京農業大学出版会, 2000
- 小泉武夫, 発酵食品学, 株式会社講談社, 2012
- 藤田建夫, 食品微生物学の基礎, 株式会社講談社, 2013
- 北本勝ひこ, 発酵醸造学, 株式会社朝倉書店, 2022